今回は、京都府京都市西京区にある真言宗の寺院「正法寺」をご紹介します。
この正法寺には、不動明王が祀られる不動堂をはじめ、駆け足姿の大黒天像や岩などを動物に例えたお庭があるなど、見所が沢山あるお寺です。
すぐ近くには、奈良県に鎮座する春日大社の勧請を受けた大原野神社や、桜と紅葉の名所であり「花の寺」との異名を持つ勝持寺など、観光客が数多く訪れる神社・寺院があります。
>>「花の寺」の異名を持つ勝持寺に参拝!御朱印や時間、アクセスも
それでは、正法寺へお参りしていきましょう。
正法寺へお参り
京都府京都市は西京区。京都市内から亀岡市へと向かう国道9号線を西に入り、山間に向かって細い道路を進んでいくと左手に見えてくるのは、真言宗東寺派の寺院「正法寺」です。
読みは「しょうぼうじ」。
開山は西暦754年。
中国・唐時代の高僧・鑑真の弟子であった智威大徳という僧が修行を行った草庵が発祥だと伝わります。
その後、比叡山延暦寺の開祖でもある最澄がこの地に寺院を建て、西暦800年代初期には弘法大師・空海もこの寺に入ったという話も残っています。
応仁の乱(西暦1267年~)の戦火により、隣接する大原野神社・勝持寺と共に完全に焼失し、荒廃してしまいますが、江戸時代初期に再建され、その後は江戸幕府・第5代将軍である徳川綱吉の実母である桂昌院の帰依を受け、信仰を取り戻していきます。
正法寺への入り口はコチラ。
1枚目の写真の右奥に見えるのは正法寺の向いに鎮座する「大原野神社」の鳥居です。
紫式部の氏神でもある京春日・大原野神社へ参拝!御朱印とアクセスも
砂利の参道を進むと参拝者専用の駐車場(無料)と共に右手に突然現れるのは、不動堂。
不動明王を祀るお堂ですが、こちらは境内入口ではありませんのでご注意下さい。
ちなみに拝観順路にこの不動堂内部も含まれていますので、後ほどゆっくりと拝観することが出来ます。
不動堂横の階段を進むと正法寺の山門が見えて来ました。
一礼をして山門をくぐり、拝観受付で拝観料300円を納めて境内へと足を踏み入れます。
受付を過ぎて最初に拝観できるのは、綺麗に手入れの施された本堂前の小庭園。
写真奥に見える門が本来の正法寺山門のようですが、こちらには柵が設けられ出入りすることは出来なくなっています。
庭園脇には江戸時代中期に造られた手水鉢もみることが出来ます。
庭園を進むと、すぐに本堂があります。
この本堂前で靴を脱いで、お堂へとあがります。
まずは御本尊である三面千手観音様にお参りをしましょう。
心を静めて、合唱し一礼にてお参りします。
本堂では音声による解説を聞くこともでき、今回は冬場での参拝だったので寒さが身に染みていたのですが、お参りする床にはホットカーペットが敷かれていたりと、拝観者への心遣いを感じることが出来ました。
さて、正法寺の拝観順路は、ここから左右に分かれます。
本堂に向かって右手の順路では不動堂・書院襖絵などが拝観でき、左手の順路では「大原野走り大黒天」と宝生苑(鳥獣の石庭)を拝観することが出来ます。
それではまず右手の不動堂方面から拝観していきましょう。
〇書院襖絵「西山讃歌」
本堂から書院へと移動すると、すぐに襖絵を拝観することが出来ます。
襖絵が見られるのは2部屋。
1部屋目では「大日如来 阿弥陀二十五菩薩来迎図」も拝観することが出来ます。
本来、密教系とも言える後発の真言宗の御本尊である大日如来と、先発の浄土宗・浄土真宗の御本尊である阿弥陀如来は別の仏様だと言われています。
しかしながら、この図では大日如来と阿弥陀如来を同一視し、往生者(天命を全うした人)をお迎えに降りてこられた阿弥陀如来御一行が描かれています。
この「来迎図」は、浄土宗の総本山である知恩院(京都府京都市東山区)に所蔵されている国宝「早来迎」を真似て描かれたものですが、正法寺は真言宗の寺院ですから、大日如来を阿弥陀如来に見立て密教風に脚色されて描かれている、というわけです。
2部屋目では襖絵と共に、透かし掛軸を拝観することが出来ます。
写真左手奥、水辺で水を飲もうとしている2羽の白鶴が描かれた掛軸。
ちょっと違和感を感じませんか?
そう、この掛軸、実は縁の部分しかないのです。
本来絵が描かれている部分が抜かれており、窓の外の風景が透けて見えるようになっています。
つまり、2羽の白鶴は窓の外に置かれたオブジェクトなのです。
ちょっとしたギミックではありますが、私は思わず「凄いなこれ・・・。」と独り言を呟いてしまいました。
また、部屋の襖に描かれたこの絵は、日本画家・西井佐代子先生(故人)の作品です。
西井先生は闘病のさなか、自身の余命と向き合いながらこの襖絵を描き上げました。
高速道路(京都縦貫道)建設などで失われつつある大原野の風景を、端整かつノスタルジックに表現したものです。
残念ながら、西井先生は平成12年に亡くなっており、先生の遺作としても大変貴重な襖絵となっています。
〇不動堂
書院を抜け廊下を進むと、その先には不動明王を祀った不動堂があります。
山門前にて見かけた仁王像が建っているお堂の内部です。
祀られるのは、不動明王・愛染明王・弘法大師(空海)です。
こちらでも心を静かにして、合唱、一礼にてお参りします。
不動堂脇には水琴窟もあり、地下空洞に反響する水滴の音を竹筒を通して楽しむことが出来ます。
さらに不動堂の奥には稲荷社もありますが、こちらはお稲荷様にご縁のある方のみお参りすると良いと思います。
そこからさらに奥に進むと「観音滝」という滝を見ることが出来ます。
写真奥に見えるのは不動堂です。
〇大原野走り大黒天
観音滝の拝観が終わったあとは本堂まで来た道を戻り、今度は本堂に向かって左手に進んでいきます。
途中には、緑の風景にとても馴染んでいる手水鉢もあります。
こちらでは、日本国内でも珍しい駆け足姿の大黒天像を拝観することが出来ます。
なぜ駆け足姿なのかというと、「一日でも、一刻でも早く福を授けに行きたい」という大黒天様の心遣いからだそうです。
確かに今にも走り出しそうなお姿の大黒天様です!
大黒様のお札も頂くことが出来ます。
〇宝生苑(鳥獣の石庭)
最後に拝観するのは、このお寺1番の見所と言っても過言ではない宝生苑(鳥獣の石庭)です。
この素晴らしい庭園に配置された石には、それぞれ動物に例えられており、縁側には解説図が置かれています。
全部で15種類の動物が石に見立てられて隠されています。
写真ではちょっと分かりにくいので、ぜひ直接あなたの目でこの石庭を見て、探して頂きたいと思います。
また、写真奥には稲荷山などを見ることも出来ます。
春先には庭園中央に立つ桜が綺麗に花を咲かせるそうです。
私も桜の季節にもう1度参拝したいと思います。
正法寺で頂ける御朱印と受付時間
正法寺で頂ける御朱印はコチラ。
御朱印帳に直接書いて頂きました。
300円を納めて頂いた御朱印には、御本尊である観音様が安置された場所であることを示す「大悲殿」の筆が入れられています。
御朱印が頂けるのは、拝観受付の窓口です。
拝観時に御朱印帳を預け、帰りに受け取るスタイルです。
受付時間は9時~17時(年中無休)となっていますので、ご注意下さい。
正法寺へのアクセス方法
正法寺へは車・バスどちらでも参拝可能です。
ただし、バス停から山門までの歩く距離を考えると、山門手前まで行ける車での参拝をオススメします。
なお、正法寺がある周辺には鉄道が通っていないため、最寄り駅は5km以上離れた阪急京都線「桂駅」かJR京都線「向日町駅」になります。
ただし、途中住宅が立ち並ぶ狭い道を通らなければならないため、運転に自信の無い方は、無理せずバスで参拝するか、タクシーを利用すると良いでしょう。
正法寺参拝者専用駐車場は無料で利用することが出来ますし、20台ほどの駐車スペースがあります。
バスで参拝する場合は市バス、阪急バス共に「南春日町駅」で下車し、そこから徒歩10分程です。
まとめ
☑名称
真言宗東寺派 別格本山法寿山 正法寺
☑御本尊
三面千手観音立像(重要文化財)
☑所在地
京都市西京区大原野南春日町1102
☑営業時間
年中無休 午前9時~午後17時
☑専用駐車場
20台ほど有り。無料で利用可能
☑御朱印
拝観受付で頂く。300円、御朱印帳に直接書いて頂ける
オリジナル御朱印帳は確認できず
☑アクセス方法
車がオススメ。バスの場合は市バス・阪急バス「南春日町駅」下車、徒歩10分
☑公式ホームページ
>>正法寺 公式HP
京都縦貫道「大原野I.C」から「正法寺」
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